陸自CH−47 体験搭乗記


空港内のバス内で待機していると、時間ピッタリにランウェイエンドにチヌークが姿を現した。

スポットイン、ローターが止まると、チヌークの独特のローター配置がよく分かる。
この前後にローターのあるタンデムローターゆえ、重心許容範囲が広く、スペース効率も高い。初飛行以来、半世紀も生き延びた理由なのだろう。
横から見ると三枚ブレードの前後ローターの軌跡はクロスしているように見えるが、前後ローターはシンクロしており互いにぶつかることはない。しかし、パワーアップして4枚や5枚ブレードにしたらこの設計では難しいんではないだろうか。

バスからは歩いて機体に向かうと、フェンス外からは「石垣島に自衛隊は要らない。自衛隊帰れ」のシュプレヒコールも聞こえる。
しかし憲法九条もヘリも、原型はアメリカさん。要るか要らないかは我々、日本人が状況を把握して考え、きちんと判断すべきことなんじゃなかろうか。

チヌークの形状はお世辞にもエレガントとは言い難い。
箱型の胴体と切り立った風防は、航空機というより路線バスのように見える。
IRセンサーだけはさすがに今様だが、直径の大きな低圧タイヤも飛ぶものにしては、ごつい感じで、どこかロシアチックにも見える。
海保にも自衛隊にも救急患者を運んでいただいているにも関わらず、イマイチ自衛隊に人気がないのは、この無骨さと迷彩色に違和感を覚える人が多いことに起因するのではないかと思う。

いよいよ機内に乗り込む。タラップなどはなくリアゲートからだ。パッセンジャーを機内へと誘導する作業というより、機材を積み込むという感じのルートである。
我々は誘導されつつ、リアゲートからローディングされ機内に収まった。

リアゲートが閉められる。四角い本機の胴体断面がよくわかる。
納屋のようにも見えるが低高度を飛び、与圧を持たないヘリは、貨物の積載から考えても四角い断面がもっとも合理的なのだろう。
本来、輸送用ヘリ、人員を運ぶときは、旅客機の様に前向きに座る立派なシートではなく、横向きに座るトループシートと言われる簡易タイプの椅子に座る。

機内もさすが軍用機。実に機能に徹していて、そっけない。コ久ピットと貨物室の間には、ドアもなく覗き込めばパイロットとコパイの操作も見てとれる。

エンジン始動。ローターが回りだすとヘリ特有の振動と騒音が襲う。
エアラインの旅客機とはまったく異次元の乗り物だということが良くわかる。普通に会話のできる騒音レベルではなく、両耳に当てる防音用の耳あて、通称ミッキーマウスを貸していただき飛行中はこれを装着する。

タワーと交信、機体はするすると動き出したかと思うと、いつの間にか浮いていて、固定翼機のようなタキシングから引き起こしてテイクオフという一連のイベントを意識しない。
ランウェイ04で離陸、気づくとすでに石垣空港を飛び越えていた。

インターコンチネンタル石垣リゾート上空を飛ぶ。後方に見えるのは沖縄電力の発電所だ。
チヌークはその搭載量の大きさから福島原発事故の際、上空から散水するという決死の任務にもついた。
一瞬、その光景が目に浮かんだが、石垣島の発電所は同じように海岸線にはあるもの、原発ではなく幸い火力発電所である。

空挺部隊の隊員でもなければ通常、見ることのない飛行中の真後ろの景色。
非与圧の機体なので、上半分は開きっ放しだ。右手は八島の埋立地だ。
民間人を乗せているので人やものが吸い出されて落ちないように普段はない配慮なのか、軍仕様に見えないメイクマンで売ってそうなネットが張られていた。

こちらはコクピットを通してみた機体正面の景色。視界はよいが、この速度で飛ぶ航空機というのになじみがないので、なんとなく不思議な世界だ。
飛行船か猫バスに乗った気分である。

この後、竹富、小浜、西表、黒島上空を周回し、石垣空港に戻った。